相続土地国庫帰属制度 スタートは2023年4月27日
政府は9月下旬、相続土地国庫帰属制度の概要を公表しました。
相続土地国庫帰属制度とは?
相続した不要な土地を、負担金を支払い国に引き取ってもらえる制度です。2023年4月27日に施行されます。
成立した背景には
- 相続した不要な土地を手放したいというニーズの増加
- 管理不全による所有者不明土地の発生の抑制
の2点が上げられます。
国土交通省の調査によると、全国の土地のうち所有者不明土地の割合は24%とかなりの規模に拡大しており、この問題解消が大きいでしょう。
承認申請できるのは、相続等により土地の全部または一部を取得した人です。
複数人で共有している土地は、共有者全員で共同して承認申請を行います。
対象土地の要件
制度を利用できる土地には制限があり、以下5つに該当する
場合は承認申請が却下されます。
- 建物のある土地
- 担保権または使用および収益を目的とする権利が設定されている土地
- 通路など他人による使用が予定される土地
- 土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地、その他の所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地
不承認処分の項目
また、以下5つに該当する土地は不承認処分とされます。
- 崖がある土地で、通常の管理に過分の費用または労力を要するもの
- 土地の通常の管理・処分を阻害する工作物、車両または樹木などが地上にある土地
- 除去しなければ土地の通常の管理・処分ができない有体物が地下にある土地
- 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理・処分ができない土地
- 上記のほか、通常の管理・処分に過分の費用または労力を要する土地
このように、一定の要件を満たす必要がありますが、いずれも行政不服審査・行政事件訴訟により不服申立てが可能です。
相続土地国庫帰属制度のメリット・デメリット
メリットは、相続で取得したが管理や処分に困っている土地を引き取ってもらえることです。
国庫に帰属されることで土地の管理から解放され、固定資産税の負担もなくなります。山林など
維持費がかかり処分に困る土地も制度対象です。
一方のデメリットは、引き取ってもらうには10年分の土地管理費相当額の負担金が発生することです。
特に市街地の宅地などは別途算定が必要となります。
また、制度対象となるのは土地のみで、建物がある状態では引き取ってもらえません。
土地の状況によっては多くの費用負担が生じる可能性があります。
手続きの流れ
- 承認申請(共有地の場合は共有者全員で申請する必要あり)
- 法務大臣(法務局)の要件審査・承認(実地調査権限あり)
- 負担金の納付 ※30日以内に納付しなければ承認取消
- 国庫帰属
その他にも2つのルール変更が
上記以外にも、
- 遺産分割に関する新ルール導入
- 相隣関係の見直し
の2つがいずれも2023年(令和5年)4月1日施行予定です。
1.は、被相続人の死亡から10年経過後の遺産分割は、原則として具体的相続分を考慮せず、法定相続分または指定相続分によって画一的に行うこと。
2.は、相隣関係について「隣地の所有者やその所在が分からない場合は隣地が利用できる」などの仕組みが設けられます。
これらの改正により、今後も相続に関する意識が高まることが予想されます。